不耕起栽培は炭素貯留に有効か?
不耕起栽培は、土を耕さないために土壌有機物の分解を緩慢にすることで土壌中の炭素量を増やすことができる。このため、農林水産省は、不耕起栽培について、化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取り組みと合わせて行うことで地球温暖化防止や生物多様性保全に高い効果をもたらす営農活動と位置づけて、2011年度から日本型直接支払により支援してます。私たちの研究成果においても、不耕起栽培にカバークロップの利用を組み合わせることで、土壌炭素貯留量を増加させることを明らかとしています(Higashi et al 2014;Gong et al 2020)。
しかし、不耕起圃場から排出される二酸化炭素量を測定してみますと耕起圃場に比べて不耕起圃場での二酸化炭素排出量が多くなることが認められました。そこで、不耕起圃場での土壌環境と二酸化炭素の排出量との関係を解析した結果、不耕起圃場で増加した土壌炭素は、圃場表面が残渣で被覆された環境では土壌水分が高くなることで、微生物の活動が活発化し、結果として二酸化炭素排出量が増加してくることが明らかとなりました。
現在の大学農場の不耕起圃場では炭素貯留が継続して認められますが、日本のような、湿潤な気候条件下においては、不耕起栽培による炭素貯留効果の限界についても今後、検討が必要であると思います。
本研究の成果は、Geodermaの最新号に掲載予定です。
写真:温室効果ガスの測定風景